地域新聞辻堂タイムズ

 特集:芥川賞作家・宮原昭夫さんの辻堂暮らし
昔の懐かしの写真 境川付近(鵠沼橋)長女、長男と…
■宮原昭夫(みやはらあきお)プロフィール
辻堂元町在住 小説家 
1932年 神奈川県横浜市生まれ   
早稲田大学第一文学部ロシア文学科卒業
第23回文學界新人賞「石のニンフ達」
第67回芥川賞「誰かが触った」 著書多数


■2002年「シジフォスの勲章」
(河出書房新社)2000円
障害児の生と死を光源にして健常者の病根を照らし出した作品

 文学界新人賞、そして芥川賞を受賞した小説家、宮原昭夫さん。
辻堂エリアにお住まいと聞き、早速訪ねてみた。

 出身は横浜。画家である青子さんと結婚し、青子さんの育った辻堂に新居を構え約30年。菜園や松林の残る閑静な佇まいの中、四季折々の辻堂暮らしを楽しんでいる。

 同じ辻堂とは思えない風景に出会うことができた。春には自宅の庭に生える竹の子を掘って採り、食べたり、竹を割って流しそうめんをみんなで食べる。自宅の桜を眺めながら花見も楽しめる。

 15歳の頃肺結核で何年かの療養生活で、小説をよく読んでいたことが、宮原さんの小説家人生のはじまり。やがて結核の特効薬ができ復学。中一まで戦争、昭和35年の安保という動乱の時代に育つ。ドストエフスキーが好きで早稲田大学第一文学部ロシア文学科に進学。大学在学中から自宅で塾をやりながら、小説を書いていた。芥川賞受賞作『誰かが触った』はハンセン病療養所の小説。その前に『石のニンフ達』で文学界新人賞を受賞している。

 「小説を書いた動機は、自分の少年時代をまとめてみようと思いましてね。作品は私小説と女学生を素材にしたものと、取材したルポライター的なものと3つのジャンルに分かれます。人生には現実に解決できないものが必ずあります。失恋などはその1つですが、自分が悪いわけではない。小説はカタルシスといって、そんな部分を解消してくれる何かがあると思います。そして、人の心や人生をのぞき見する面白さがあります。


 また連句の講師も勤めていますが連句の楽しさは初心者でもすぐできるし、メンバーが一人でも違えば連句もがらっと変わることです。ぜひみなさんも一度楽しんで頂きたい」と宮原さん。現在、カルチャーセンター等で小説を書くことの講師も勤めている。小説だけでなく宮原さんの温厚でユーモアに溢れる人間性が人を引きつける。熱心なファンが活動を陰で支える。豆本をつくったり、入手困難な作品を集めて小説選集を今年8月に出版する予定だ(下記参照)。


 好奇心が旺盛でなんでもやってみる性格が幸いし、友人と船釣りを楽しんでいると沿岸漁業の取材の仕事が舞い込んできた。伝統漁法を含め日本の漁業の取材で全国を回った。だから、漁港や魚の話にとても精通していて面白い話が伺える。 また、学生時代に流行っていた歌声喫茶を仲間と藤沢で復刻版である歌声コンサートを企画したこともあり話題となった。

 「宮原作品を読むと気づくことが沢山あります。宮原先生の作品はどれもが全く違
う書き方でその幅広さに驚く。小説の使う言葉1つ1つにこだわりが感じられ、手抜き
の文章が見あたらない」と生徒さんの声。

 辻堂の人達にはとても温かいぬくもりを感じます。子ども達も地域ぐるみで育てている感じです。地域のサークルや野球クラブもそうです。道ばたで会うと声かけてくれたり、地区別リレーも盛り上がっていますね(青子さんは50年前辻小時代地区別リレーの選手)。

 「前の駐車場は昔、麦畑でした。ざりがにを60匹もとって洗面器で茹でて食べたり太平台では、芹(せり)がとれました。私は辻堂小だったのですが、帰り道太平台の砂山から東町辺りまで、ランドセルのままころがり落ちて帰った思い出があります」と青子さん。「小学校時代も地区別リレーが楽しかったですね。バトンを毎度渡す相手は決まっていてよく練習しました。娘はもっぱら奉納太鼓で何かを得た様で、張り切っていました」。

「宮原昭夫 小説選」 入手困難な宮原作品を出版しようとボランティア有志が制作委員会を発足。芥川賞、文学界新人賞受賞作品の他、デビュー作品や直木賞ノミネート作品を収録した集大成。
「宮原昭夫 小説選」 5,500円
河出書房新社 2007年8月発売予定
問い合わせ:FAX045-242-0256
banlee@ytv.home.ne.jp

入手困難な宮原作品を出版しようとボランティア有志が制作委員会を発足。
←宮原夫妻と


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連句(歌仙抄・表六句)  初折
発句 表軒借りてバス待つ人や春時雨  横内鯖知(春)
抱く風呂敷の中は草餅 宮原西北(春)
第三 山はるか茶摘の唄の聞こえてきて 青木青児(春)
四句目 頁くりたる旅行案内 糸山 一(雑)
月の座 残月の廃線予告照らしをり 秋山参森(秋・月)
折端 新興衛に馬追の鳴く発句 鯖知(秋)

★「水仙」という作品を読みました。宮原さんの結核療養中の私小説であり、成長期である思春期のためらいと結核が心臓に近い部位に発病した為絶対安静の治療法を与えられ、隔離、世の中にとり残された青年の世界観が、心にずしりとくる作品でした。(編集部)
宮原作品の問合せは FAX045-242-0256  banlee@ytv.home.ne.jp

2007-4 Tujidotimes